資産運用会社に聞いてみた!
アライアンス・バーンスタインは、株式や債券、マルチアセット、オルタナティブ運用などの幅広い資産運用サービスを提供するグローバルな資産運用会社です。
世界の機関投資家、富裕層、個人投資家など幅広い顧客にサービスを提供しています
そんなアライアンスバーンスタインに今後のことについて聞いてみました。
ドナルド・トランプ米大統領が「相互関税」を発表してから 2 週間近くとなりますが、その後の事態の推移を踏まえ、世界経済への影響などに関し、アライアンス・バーンスタイン(以下、「AB」)* の見解を以下のとおりご案内いたします。
波乱に満ちた2週間
2025 年 4 月 2 日にドナルド・トランプ米大統領が 1930 年のスムート・ホーリー法以来となる大規模な関税の導入を発表して以来、世界各地で通商政策に関し目まぐるしい動きが続いています。
この「相互関税」をめぐっては発表直後から各国から報復措置の示唆や非難の応酬が相次ぎ、資本市場も大混乱に陥りました。
しかし、トランプ大統領は 4 月 9 日、貿易相手国との交渉時間を確保するため相互関税の措置を 90 日間停止すると発表しました。
多くの国々に課された一律 10%の基本税率はそのまま維持されたものの、株式市場はこれを好感し一時大幅に反騰しました。
ただし、中国に対する関税は 4 月 10 日から 145%に引き上げられ、これに対し中国も米国に対する関税を 4 月 11 日から 125%に引き上げたため、先行きへの懸念はくすぶり続けています。
また、4 月 11 日の夜になって、トランプ政権は相互関税の対象からスマートフォンや一部の半導体関連製品、ノートパソコンなどを除外すると発表しました。
関税措置によるマクロ経済、企業や産業、資本市場などへの影響をめぐり、市場では不確実性に対する懸念が高まっています。
相互関税が一時停止された際の猛烈な株価反騰時を除けば、米国株式市場のボラティリティを反映する VIX 指数は高止まりし、債券市場におけるクレジット・スプレッドも総じて拡大しています。
マクロ経済見通しへの示唆
関税措置をめぐる個別の動きは依然として流動的ですが、仮に 10%の共通関税が実施されたままであれば、米国内の消費支出や政府職員の雇用削減なども相まって、2025 年の米国実質国内総生産(GDP)成長率は 0.5%~1.0%に低下し、景気後退の可能性もかなり高まると AB では予想しています。
物価に関しても、コア消費者物価指数(CPI)ベースで 3.8%のインフレを予想しています。
直近の経済指標の動向に加え、関税の影響を考慮すると、リスクは明らかに下方に偏っています。
ただし、関税問題以前の米国経済は比較的力強かったため、今後も家計所得の伸びがインフレ率を上回り続ければ、米国経済が崩壊することはないと思われます。
インフレ期待が抑制されたままであれば、米連邦準備制度理事会(FRB)は年内に 0.75%ポイントないしそれ以上の金利引き下げを実施すると予想しています。
今のところ、中国以外の国々に対しても最も厳しい関税が適用される可能性は低いと思われますが、関税政策の変更はまだまだ続くと予想されます。
そうならなかったとしても、すでに一定のダメージは生じてしまっています。
政策の不確実性を背景に、企業や家計は投資や支出を控えるでしょう。関税の影響は米国のみにとどまりません。
欧州連合(EU)は 10 日、多くの米国製品に対する報復関税の発動を 90 日間停止することを発表しましたが、それでも成長率への打撃は関税騒動以前の予想と比べ相当なものになりそうです。
関税の影響や景気信頼感の低下から、ユーロ圏経済は再び低成長、あるいは景気後退リスクに直面する可能性があります。
AB では、欧州中央銀行(ECB)が年内に政策金利を 2%以下に引き下げると予想しています。
中国は、第 1 次トランプ政権時代の 2018 年から米国の関税引き上げに対し準備してきましたが、今般の追加関税の規模は大きな打撃となるでしょう。
このため、中国は関税の影響を相殺すべく景気刺激策を打ち出すと見られます。
米国への直接的な輸出は、中国の GDP の 3%に相当します。
また、米国にとっても中国は重要な消費財供給国であるため、米国消費者が関税コストを負担することになる可能性があります。
その他のアジア諸国においても、10%の関税が追加されるだけで成長が鈍化する可能性は高く、政策面の不確実性によって家計や企業の投資・支出への意欲が減退する可能性が高いと見られます。
これには、米国向け輸出が中国からシフトすることによるプラス効果を相殺してあまりあるマイナス効果があると予想されます。
政策の大きな振れ幅
今後実施され得る関税措置の種類や時期、規模を正確に予想するのは困難です。
しかし、これまでの政策の振れ幅の大きさを考えると、今後3カ月程度に関し、十分な幅を持った複数のシナリオを想定しておくことが賢明だとABでは考えます。
関税は米国や世界の経済の行方を左右する要因の一部にすぎません。
とはいえ、多くの変数の中でも、現時点では関税が最大の要因です。
そして、この変数には依然として不確定要素が多いのですが、現時点での米国経済の先行きを数字で表すとすれば、「すべて順調」の可能性が20%、「減速」の可能性が50%、景気後退の可能性が30%と、ABでは予測しています。
以上です。皆さんはどう感じていますか? ご意見ご感想をお聞かせください