米国経済・金融動向レポート
― インフレ鈍化と高関税の綱引き、テック決算がけん引する株式市場 ―
1.インフレは想定以上に減速
3月の米消費者物価指数(CPI)は前年同月比+2.4%、前月比▲0.1%と市場予想(+2.6%)を下回りました。コアCPIも+2.8%と2021年3月以来の低水準で、ガソリンを中心とするエネルギー価格の下落が主因です。
ポイント
- インフレ鈍化で「FRBが年内に利下げに動く」との観測が急浮上
- 一方、関税によるコスト高が再びインフレを押し上げるリスクも残存
2.FRB:3月据え置き、4月末会合でも現状維持が大勢
FOMCは3月19日、政策金利を4.25〜4.50%で据え置きました。声明では「データ次第で追加調整を慎重に判断」とし、量的引き締め(QT)は継続。市場は9月利下げを半分ほど織り込みつつあります。
3.雇用:新規失業保険申請22.2万件、労働市場はなお底堅い
4月19日までの週の新規失業保険申請は22.2万件(前週比+6,000)。歴史的には低位にとどまり、雇用環境は堅調ですが、企業は関税不透明感から設備投資に慎重との指摘も出ています。
4.成長率:2024年Q4は+2.4%、Q1速報値は4月30日発表へ
2024年第4四半期の実質GDP(確報値)は年率+2.4%と堅調でしたが、今月30日に公表される2025年第1四半期・速報値は+1.7〜2.0%程度への減速が予想されています。
5.トランプ政権の対中関税:145%関税を維持、交渉は停滞
トランプ大統領は中国からの輸入品に最大145%の関税を課しており、財務長官も「持続不可能」と発言。米側は「大幅引き下げに応じる可能性も」と示唆する一方、中国は交渉の存在自体を否定しました。
- インフレ再燃リスク:関税が長期化すればCPIの再上昇につながる恐れ
- 企業コスト:仕入れ価格上昇により、企業収益圧迫 → 株価ボラティリティ拡大
6.金融市場:株はテック主導で回復、債券利回りは低下
資産 | 4月24日終値 | 前日比 | 背景 |
---|---|---|---|
S&P500 | 5,484.77 | +2.03% | テック決算・関税緩和観測 |
NASDAQ | 17,166.04 | +2.74% | AI関連に資金流入 |
10年国債利回り | 4.40% | ▲1bp | インフレ鈍化で低下 |
7.企業決算ハイライト
企業 | 四半期 | 売上高 | EPS | 注目点 |
---|---|---|---|---|
Alphabet | 2025/Q1 | $90.23bn | $2.81 | AI強化でCloud営業益2.4倍、自社株買い$70bn発表 |
今後の注目:4月30日発表のマイクロソフト決算(Azure+OpenAI収益化)が、AIブームの持続性を占う試金石になる見通し。
8.今後の重要イベント
日付 | イベント |
---|---|
4/29–30 | FOMC(政策金利・パウエル議長会見) |
4/30 | 2025年Q1 GDP速報値/マイクロソフト決算 |
5/02 | 4月雇用統計 |
5/13 | 4月CPI |
9.まとめ:投資家への示唆
- インフレ鈍化 × 高関税 — デフレ要因とインフレ要因がせめぎ合い。CPIは一時的に落ち着いても、関税が長引けば再加速の可能性。
- FRBの舵取り — 市場は9月利下げを織り込むが、雇用や関税次第で後ズレも想定。ポジションは期間ミックスで。
- テックの底力 — Alphabetの好決算が示す通り、生成AI関連投資は続伸要因。中長期での成長株物色は継続。
- イベントドリブン戦略 — FOMC・GDP・雇用統計とビッグイベントが連続。短期トレードはヘッジ必須。